スナックは全国に約12万店舗、市場規模2兆円超ともいわれる巨大なレガシー産業だ。しかし「行ってみたいけれど入ったことがない」人が7割を超えるなど、課題も山積している。そんなスナック業界をDXで変革しようとしているのが、スナックテクノロジーズCEOの関谷有三氏だ。IVS2025京都のローンチパッドでオーディエンス賞を獲得し、1.3億円の資金調達も実施した注目の起業家に、事業の全貌と起業哲学を聞いた。
レガシー産業を次々と変革してきた連続起業家の経歴
関谷氏のキャリアは異色だ。大学卒業後、経営難だった実家の水道屋を継ぎ、特許技術を開発して全国展開、国内第3位の大手ポンプメーカーへ事業売却を果たした。台湾の人気カフェブランドを日本に誘致し後のタピオカブームの火付け役に。アパレルでは「スーツに見える作業着」を開発しヒット商品に育てた。レガシー産業の隙間を見つけて事業を成功させてきた連続起業家である。
スナック業界が抱える巨大な課題とDXの可能性
全国300件以上を巡った関谷氏は、初めての店に入る心理的ハードル、手書きの明細や不透明な会計、どんぶり勘定で経営が厳しい店舗側の課題など、アナログゆえの問題を深く実感してきた。一方、孤独化や地方の過疎化が進む現代において、リアルなコミュニティの場としてスナックの社会的意義はむしろ高まっている。インバウンド需要も追い風だ。この巨大市場のペインをテクノロジーで解決するのがスナックテクノロジーズの挑戦である。
スナテクが提供するDXの仕組みとビジネスモデル
スナテクの主な機能は、全店共通の会員システムだ。QRコードでチェックインすると、オンライン上に「今どの店に誰がいるか」が表示され、新たな出会いが生まれる仕組みになっている。退店時には自動精算が完了し、利用明細と領収書がメールで届く。ボトルキープ機能や「行くかも」機能など、スナック特有のアナログ運用もデジタル化した。ビジネスモデルは決済額の1%を従量課金で徴収する形式で、導入店舗はクレジットカード手数料が業界水準より1%安くなるメリットもある。カラオケ大手DAMとの業務提携により、ナイトマーケットで圧倒的シェアを持つDAMの販路を活用した全国展開を計画している。
「降りてくる」と「湧いてくる」起業家の直感力
関谷氏の事業選定には独自の哲学がある。条件は、自分自身がペルソナとして課題を感じていること、一生をかけられるほどの愛があること、社会的ミッションがあることの3つだ。アイデアは週1回程度「降りてくる」が、すぐには着手せず寝かせておく。やがて様々な要素が交差した時に「湧いてくる」状態になり、自分でも止められない衝動になるという。スナテクも事業が社会インフラになる未来像まで確信を持った上でスタートしている。
POCから全国展開へ向けた今後の戦略
現在スナテクは計3店舗でPOCを実施中だ。最大の課題は「酔っ払いでも簡単に会員登録できるUI」の実現だった。スナックの来店客は2次会・3次会が基本のため、通常のDXサービスとは異なるハードルがある。この課題と加盟店の売上向上の検証をクリアし、30店舗への拡大フェーズに移行。その後の資金調達を経て本格的な全国展開を開始する計画だ。5年計画で売上80億円、営業利益30億円を目標に掲げ、スナック文化の海外輸出も視野に入れている。
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